2015.11.30

生産性が5割アップ 超高速安定稼働に着目

とどまることのない短納期化、どんどんと進む小ロット化、その上での高品質化、市場から寄せられる印刷会社へのニーズはより高度で難しくなっている。このような難問に対して図書印刷㈱(本社・東京都北区、川田和照社長)が採った選択、それが「超高速での安定稼働」「迅速なジョブ替え機構」「LED-UVによる即乾」を兼ね備えた枚葉オフセット印刷機の導入だ。この解答を導き出す印刷機として、今年10月からKBA製の菊全判印刷機「Rapida106」の4色機と5色機の2台を稼働させている。


同社は出版印刷をメーンとする大手印刷会社。印刷製造は静岡・沼津工場と埼玉・川越工場の2拠点で、大まかな振り分けとしては、文庫・コミック・教科書などの書籍類は沼津、雑誌や商業印刷物など瞬発性を要するものは川越で生産している。今回、2台の「Rapida106」を導入したのは川越工場で、菊全判4色機1台と入れ替えて、生産性および瞬発力の強化を図った。
同社では今回の導入にあたり、国内外4社の印刷機メーカーの印刷機をテストし、網点品質、高速稼働時の安定性、ジョブ替えの早さによる小ロット対応力、刷り出し時の損紙量、スキルレス性などに着目して評価した。
着目点の1つ「超高速での安定稼働」という点で顕著な差が現れた。印刷機の最高速となる毎時1万8000回転で稼働しても振動・騒音がとても少なく、フィーダーからの紙の出具合やデリバリーでの揃いの良さも際立っていた。「中速での網点品質はどの印刷機でも大差はないと思う。当社では高速で稼働することを前提としていたが、“Rapida106”は高速稼働時の品質低下が小さかった。また、最高速で稼働していても静かで、とても安定している。長期的な視点で見ても、安定的な稼働が期待できる」と、同社製造技術部の安孫子一部長は評価する。実際の導入後も、多くの仕事では機械最高速の毎時1万8000回転で稼働している。「これまで使ってきた印刷機では、スペックどおりの最高速で稼働することはなかった。稼働速度の部分だけで単純に比べても、既設機と比べて生産性が約5割増となる」(安孫子部長)
また用紙搬送にすぐれ、とくにフィーダーが安定するので、チョコ停がほぼない。「チョコ停がないということは実生産時間の増大になり、オペレーターのストレス軽減にもなる。それに加え、その間にロスする紙やインキ、エネルギーも節減でき、印刷再開時の調整も不要となる」(安孫子部長)
それを実現する「Rapida106」のフィーダーには引き針がなく、インフィード部を用紙が通過する時にセンサーで用紙がどの位置に来ているかを1枚1枚検知し、それに応じて印刷機側のグリッパーが用紙位置を調整して送る「ドライブトロニックSIS」という独特な機構を採る。通常は、前当てに当ててから引き針で用紙位置を調整して送るが、それと比べると用紙位置合わせ時間が半分で済み、かつ見当精度も高くなる。さらに、従来のようにオペレーターがインフィード部で引き針の調整をする必要もなく、紙積みの状態に関わらず確実に印刷機に用紙を送ることができる。同社では人員の有効活用を目指して他工程との多能工化を目指しており、その上でもこのようなスキルレス化は大きな意味を持つ。
生産性の向上を図るためには高速生産力も必要だが、仕事の小ロット化が進む中では迅速なジョブ替えができることも重要なポイントとなる。その点でも「Rapida106」は高いパフォーマンスを示している。サーボモーターで各印刷ユニットを独立して直接駆動させることで刷版交換と同時に各種洗浄作業もでき、ジョブ替え時間の極小化が図れる「ドライブトロニックSPC」という機能を搭載することで、ジョブ替え時間が従来の半分以下になった。「版交換も早いし、高精度な見当調整ができる機構もついているので、ジョブ替え時間は5~6分しかかからない。とくに、従来機だとフィーダー調整に一定時間がかかるので、紙を変える時に大きな差が出る」と安孫子部長は語る。

現在、このジョブ替えの早さを最大限に活用するために、2台の「Rapida106」に優先的に小ロットの仕事を割り振っている。「主な仕事のロットは3000枚強で、1時間あたり3ジョブをこなせる状況にある。これらの印刷機では、たとえ小ロットであっても最高速で稼働することを基本としている。ただ、あまりに早く印刷が終わってしまうため次のジョブの刷版や用紙の準備が追い付かず、印刷機に待ち時間ができてしまうことがある。小ロット対応力の真価を発揮できる環境作りが次の課題だ。まずは稼働率や能率よりも1日あたりのジョブ数を重視し、台数を消化することで外注分の内製化をしていく」(安孫子部長)
今回導入した「Rapida106」は、KBA製では国内初となるLED-UV乾燥システムを搭載したモデル。同社川越工場にとっても初めてのUV印刷機だったが、スムーズに立ち上がった。毎時1万8000回転で印刷してもしっかりと乾燥しており、乾燥に起因する問題はない。「即乾するのですぐに裏面印刷や次工程に回すことができ、短納期対応に貢献している。油性印刷機で発生していたインキ乾燥やパウダー、ドライダウンにまつわるトラブルもなくなった。油性印刷とのカラーマッチングもできており、再版の仕事をこなしている。また、パウダーレスなので工場内もきれいになり、印刷立ち会いで訪れる人からも“このきれいな印刷機で刷って欲しい”と言われ始めている」(安孫子部長)
「Rapida106」にはこのほかにも、インラインでの色調自動補正機能「クオリトロニックカラーコントロール」、専用回線で印刷機の症状を診断して即座に対応することで万一の際のダウンタイムを最小化する「リモートメンテナンス」などの機能も備える。「今回、印刷機の選定対象として、初めて国産以外のものを俎上にのせた。その結果、今の当社の求めにもっとも合ったのが“Rapida106”ならではの先進技術だった。ただ、今後も同じ機械だけを入れ続けるわけではない。同じ日本企業として、これに負けないものを国産メーカーが作ることを期待している」(安孫子部長)

(株)日本印刷新聞社掲載記事

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