2014.04.07

KBA事例研究ツアー【中】 革新的な運用方法を確立し、収益性向上に繋げている3社

今回は、KBA製の印刷機ならではの独特な機能や特徴をベースに革新的な運用方法を確立し、収益性向上に繋げている3社の事例を紹介する。

極めて高い競争提案力菊4倍判印刷機で特化戦略 Ellerhold社

世界最大の枚葉オフセット印刷機、それがKBA製の菊4倍判印刷機「Rapida205」だ。最高稼働速度毎時9000回転、最大用紙サイズ2050×1510ミリ、幅方向に69のインキキーを備え、1つのシリンダーの重量が4・5トンにもおよぶ超大判枚葉オフセット印刷機を駆使して営業しているのが、ドイツ東部の街、ラデボイル近郊に本社工場を構えるEllerhold社だ。

同社は26年前に創業した比較的歴史の浅い会社で、初めて「Rapida205」を導入したのは約10年前。超大判印刷機を活用したアプリケーションを得意とし、宣伝用屋外ポスターや壁紙、パッケージ印刷のほか、独自ブランドの段ボール製作なども行っており、それらをドイツ国内の6ヶ所の工場で生産している。

「Rapida205」では、やはり大きなロットのジョブはあまりなく、もっとも多いのは200-500部程度。ページ物の多面付け用途はなくて1枚物がほとんど。ちなみに、同社の刷版使用量は1日に400平方メートル以上にのぼる。ロットが小さいのでジョブ替えの効率性や迅速な色合わせが求められるが、「Rapida」は判型が大きくてもその機能に変わりはない。印刷品質についても同様で、見当やシワなどでトラブルが起きることもないという。

「Rapida205」は欧州全体でも14台しか稼働していない稀少モデル。同社はそのうちの5台を有しており、それを背景にして超大判印刷において極めて高い競争提案力を持ち、超大判印刷のトップブランドの地位を確立している。ただ、その地位に胡坐をかくことなく、超大判印刷の進化に力を注いでおり、2050×1510ミリよりも大きなサイズについて「Rapida205」で印刷したものを複数枚貼り合わせるケースで、貼り合わせを正確かつ効率的に行うための装置を開発・製造したり、ワンパスで両面カラー印刷ができる輪転方式の超大判(2600ミリ幅)インクジェット機の開発・製造も行い、「Rapida205」の後加工や極小ロットの仕事を補完する体制を整え、事業基盤のさらなる強化を図っている。

自動化機能を信頼オペレーター1人体制 DRUCKZONE社

ドイツ東部のコトブスにあるDRUCKZONE社では、KBA製の菊全判両面兼用8色印刷機「Rapida106」の各種自動化機能を全面的に信頼し、オペレーター1人だけの完全ワンマンオペレーション体制を敷いている。

刷り始めは一般的な印刷会社と同様、色および見当のチェックはきちんと行う。その後本刷りに入ると、印刷機内のカメラで印刷物のカラーパッチを読み取り、基準濃度との誤差があればインキキーを自動補正するインラインカラーコントロールの能力を完全に信頼をし、印刷中の抜き取り検査はキズや汚れの確認のみ。その頻度は一般的な印刷会社の1/10程度しか行わない。紙送りのトラブルは基本的に起こらないので、用紙をセットする時以外にはフィーダー側に人がいることはない。印刷中はデリバリー部やオペレーションスタンドからオペレーターが離れている時間も長く、次の仕事の版のセットやインキの供給、用紙の準備などの作業を行い、効率的なジョブ替えをするための前準備などをしている。印刷機の稼働速度は少し抑え目で、毎時1万2000回転程度での稼働が多い。

ジョブ替えについても、ダイレクトドライブ機構による自動化および同時並行作業による効果、そして前の仕事中にできる範囲での準備をしていることもあり、用紙替えを要さなければ1人だけでも5-6分程度で完了する。

3000件の受注一手に欧州最大通販会社の選択 United Print社

先述のEllerhold社の向かいに位置するUnited Print社は、ドイツを中心とした欧州全域を商圏にし、6言語26ヶ国のポータルサイトをもって展開する欧州最大級の印刷通販会社。1万平方メートルの敷地で700人が働く同社では、1週間で425トンの用紙、8トンのインキ、8トンのニスを使用し、1日の受注は約3000件にのぼる。その印刷を一手に担っているのが、所狭しと工場内に並ぶKBA製の菊全判印刷機「Rapida105」と菊倍判印刷機「Rapida142」だ。

同社には営業スタッフは1人もおらず、すべての受注はWebから。製品発送は1日2回で、正午までに受注したものは翌日には出荷・発送される。効率的な受注と確実で安定した短納期に対応する鍵は、システム構築と工程管理にある。同社ではIT部門にシステムエンジニアを多く抱え、ポータルサイトや工程管理をはじめとした各種システムも社内で自社に合った仕様で制作する。そのシステムでは、受注案件すべてにバーコードを発行し、そのバーコードが全工程において材料(刷版や印刷物など)に添付される。各工程のオペレーターはPCに手入力するといった煩わしい作業はせず、回ってきたバーコードをリーダーで読み取るだけ。それで情報のやり取りが完了する仕組みを構築し、進捗管理やジョブのプリセットデータの受け渡しを効率的に行っている。

欧州でもっとも安い印刷通販会社と評される同社だが、利益率は11%を確保している。その高い利益率を達成する手法の1つとして、もっとも多いジョブはチラシ/フライヤーなので、使用する用紙の種類を絞ることで複数のジョブを1つに面付けするギャンギング(付け合わせ)をしやすくしている。その複数のジョブを取り違えず、かつ効率的に処理する上でもバーコードが活用される。ある刷版のバーコードには、菊倍判のスペースに付け合わせた15種類のジョブの内容、使用印刷機の種類、通し枚数から納品用の箱番号までのあらゆる情報が記され、ジョブの混同を防いでいる。

そのジョブデータを確実に各工程間で受け渡すための工夫の1つとして、同社ではプリプレスから印刷、断裁、折り、抜き、ラミネート、封入などの後加工までの機器を同じ世代のもので揃えている。世代が異なる機器間では、データ接続の互換性での不具合や機能が限定されるといった問題が少なからず起こるからだ。もちろん機器選定はその世代で最良のものを選ぶ。「Rapida105/142」についても、印刷品質・生産性・データ転送の互換性などを勘案した上で選択し、ほぼ同世代のものが並んでいる。

(株)日本印刷新聞社掲載記事

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