2014.03.31
KBA事例研究ツアー【上】 世界初ダイレクトドライブ搭載オフ輪の代替、菊倍両面機
KBAジャパン(株)(本社・東京都中央区、ケネス・ハンセン社長)は2月16-23日まで、欧州のKBA製印刷機のユーザー企業5社を巡る事例研究ツアーを催行した。特殊印刷仕様に長ける、大判印刷に強い、充実した各種自動化機能の搭載、ユーザー要望への柔軟な対応力といったKBA製印刷機の特徴を自社の経営にうまく組み込んで成功を収めている各社の先進的な取り組みについて、3回にわたって連載する。
Himmer社
「電子書籍の出現により紙の本は減っていくだろう。しかし、紙の本は決してなくならない。紙の本が減った時、それでも当社が市場から必要とされるための選択がコレだ」と語るのは、ドイツ・アウグスブルグ近郊の印刷会社、Himmer社のマーカス・フィッシャーCOO。Himmer社は創業以来170年を超える長い歴史を持つ老舗で、ドイツ出版印刷業界のリーディングカンパニーだ。ドイツでも日本と同様、ここ数年で市場が大きく変化し、出版印刷についても通し枚数はどんどん少なくなっている。そこで、ジョブ替えの迅速さと実生産性の高さを兼ね備えた印刷機の選択として、KBA製の菊倍判両面兼用8色印刷機「Rapida145」の世界1号機を2013年初頭に導入した。
Himmer社では菊全判のほかにA4倍判や菊倍判の印刷機をラインナップし、大判枚葉オフセット印刷に長らく強みを持ってきた。しかし現在は状況が変わり、2000枚通し前後のジョブが増加。したがって頻繁なジョブ替えを要することから、準備時間短縮が図れるB2判枚葉デジタル印刷機の導入も検討したものの、印刷コストの高さから導入を見送ってきた。
そんな同社がピンときた印刷機と出会ったのはdrupa2012でのこと。従来から同社が強みとしている大判印刷において、刷版交換、ブランケットや圧胴の洗浄、インキの色替えなどをすべて同時並行でできて準備時間を極小化できる、既設印刷機メーカーにはなかった機能を搭載する「Rapida145」に目がとまった。準備時間の極小化が図れるのは「Rapida145」が搭載する機能の1つ、「ドライブトロニックSPC(サイマルテーニアス・プレート・チェンジ)」によるもので、菊倍判印刷機でこのようなサーボモーターで各ユニットを独立して直接駆動させる(ダイレクトドライブ)方式を採用しているのは「Rapida145」だけだ。高水準でかつ独特な技術、そして元々同社が強みとしている大判印刷をさらに進化させられる点に魅かれ、同社の大判印刷を担う新たな旗艦機として、世界初となるダイレクトドライブ搭載の菊倍判両面兼用8色印刷機「Rapida145」への入れ替えを決断した。
同社では現在、週6日24時間体制で「Rapida145」を稼働。当初の期待通り、従来機では35-40分程かかっていたジョブ替えが7-10分ででき、刷り始めに色と見当をチェックすればすぐに本生産に移ることができている。もう1つの期待である両面印刷についても菊倍判世界最高速の毎時1万5000枚で実生産ができ、これはA全判オフ輪だと毎分500回転(A4判48万ページ/時)に相当する。実生産速度だけを見てもオフ輪に匹敵する上、準備時間の短さや品質の高さ、仕事の汎用性も加えて勘案すると、オフ輪の代替機としても十分視野に入るものだ。
準備時間の短さは「ドライブトロニックSPC」の効果だけにとどまらない。この「Rapida145」には「フライングジョブチェンジ機能」も搭載されている。「フライングジョブチェンジ機能」とは、たとえば2/2色印刷の次に異なる2/2色印刷の仕事をする場合、最初のジョブを印刷している間に空いている胴に次の2/2色印刷のジョブの刷版をセットしておくと、はじめのジョブが終わると印刷機が自動的に次のジョブの各種調整を行い、すぐに印刷を開始するもの。ジョブ替えの間も印刷機の駆動は止まらずフィーダーからの用紙供給だけを止めているだけなので、極めて迅速に次の仕事へ移ることができる。「ドイツには国際的な企業が多いので、同じ絵柄で多言語分を印刷する仕事がある。その際、文字で使う墨版だけを変えるのだが、そこでフライングジョブチェンジ機能を使うとジョブ替えの早さはデジタル印刷機レベルだ」(フィッシャーCOO)
判サイズが大きくなっても印刷品質は菊全判と変わることはなく、高品質が求められる料理本などの印刷も「Rapida145」でこなしている。全品の印刷濃度を印刷機内のカメラで読み取り、誤差があれば印刷機の自動補正をするインラインカラーコントロールを搭載していることから、表裏による色の違いや1枚目と刷了までの色の違いもなく、折り分かれの見開きページであってもしっかりと色が合う。大判印刷機で起こりやすいファンアウトもKBAの独自技術によって発生せず、刷版の加減焼きなどをしなくても見当がきちんと合うという。なお、使用する用紙は60-220グラム/平方メートルで、刷り出し損紙は70-120枚程となっている。
フィッシャーCOOは「Rapida145」の導入について、「設置後の立ち上がりもスムーズで、安定して稼働し続けている。菊全判印刷機と同じ機付人員数(2人)で面付けできるページは2倍な上、折りも一気に32ページ分できる。さらに、ジョブ替えもとても早いので、菊全判印刷機3台分程の生産性があり、ある意味で頂点を極めた印刷機だと思う。大判だけでなく菊全判の仕事もたくさん取り込めるので、当社の現状にうってつけで、導入を決断して本当に良かった。また、以前に導入した他社製の大判両面機では開発当時の技術者もいなくなりパーツやサービスの供給体制も満足いくレベルにないこともあって“Rapida145”を導入したが、KBAはその点でも質の高いものを提供してくれる。日本でも小ロット化が進み、かつ品質要求がとても高い国だと聞いているが、それでもこれは自信を持って勧められるし、当社の次の大判機もKBA製のものにする」と評している。
(株)日本印刷新聞社掲載記事
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